育薬セミナー特別企画“災害時、「薬が飲めない 使えない」「生活・体調の変化」に対応した薬学的管理”を開催しました。 | ||
去る 2011 年 11 月 18 日(金)に、東京大学本郷キャンパス福武ホールにて、 育薬セミナー『災害時、「薬が飲めない 使えない」「生活・体調の変化」に対応した薬学的管理』を開催しました。 当日は、学内・学外の大学生・大学院生、薬剤師など約 100 名が参加しました。 本セミナーは、大学で医療や医薬品について学び、研究する学部生・大学院生、及び医療現場の薬剤師を対象として、 災害時においても医薬品適正使用を推進するための方法論を習得することを目的として行われました。
第1部は『薬物療法への薬剤師の参画』をテーマに、被災地での薬剤師による「薬物療法の実践」について、
東日本大震災で被災した大船渡の薬剤師と南三陸にて救援活動に参加した薬剤師をお招きし、講演いただきました。
つづいて第2部では、『災害時の薬物療法』をテーマに、災害時に「薬が飲めない 使えない」状況にどのように対応すればよいか、
災害時の「生活・体調の変化」に対応してどのように薬物治療を行えばよいかが事例形式で取り上げられました。
第3部は『災害時に困らない「薬とその情報」管理』について、「薬とその情報」管理のための手作りの工夫やお薬手帳の活用、スマートフォンを用いた薬の情報管理の取り組みなどが紹介されました。
災害時には、患者が毎日使用していた薬を失ってしまう可能性があります。 病院や調剤薬局に保管されていたカルテや記録を閲覧することもできません。 混乱の中では、救護所や避難所の医師や薬剤師は、患者が使用していた薬を特定できず、適切な対応ができません。
今回の東日本大震災、平成 7 年の阪神・淡路大震災でもそうでした。
薬の種類によっては服用を突然中止せざるを得なくなると、薬のリバウンド現象や離脱症状などの重大な副作用が惹起する可能性があります。
「災害時において薬が使用できない状況は如何に危険であるか!」という理解は必須です。
一方で、運良く、薬が手に入ったとしても、災害時には薬の種類、用法用量などの変更が必要となる場合もあります。
例えば今回の震災で、ある避難所では、血糖降下薬によると思われる低血糖を起こす患者が増えまし。
食事を十分に摂れていないことが背景にあると考えられます。
「災害時において患者の生活・体調の変化に対応して薬物治療をどう変えていくか?」ということは大きな課題です。
津波被害に逢った方とそうでない方、自宅で生活している方と避難所で生活をしている方とでは大きな違いがあります。
さらに、災害直後から復旧・復興の経過とともに変えていくことも必要です。
そこで本セミナーでは、「突然の中止が危険な薬、何が起こり、対処法はどうしたらよいのか?」、
「災害時には生活や関連疾患(症状、体調など)がどう変わる事が想定されるか?
それまで通り薬を使用して何が問題か? 対処法として薬の種類、用法用量をどう変えるか?」をまとめました。
さらに、患者が災害時に「これまでどの薬をどの様な用法用量で使用していたか分からない!」という問題への対処法を考えることも重要です。
薬のレセプト(診療報酬明細書)情報を災害時に閲覧できるようにすること、IC カードを用いた情報の事前管理と災害時の閲覧などが考えられますが、
一方で、患者自身が今すぐにできる手作りの方法を伝授することも重要です。本セミナーでは、「災害時に困らない「医薬品と その情報」管理」についても紹介されました。
ご挨拶 | 18:00~18:05 長野 哲雄(東京大学大学院 薬学系研究科・研究科長) |
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セミナーの趣旨説明 | 18:05~18:10 澤田 康文(東京大学大学院 薬学系研究科) |
セミナー |
18:10~20:55 司会・座長 松木 則夫(東京大学大学院 薬学系研究科) 第1部 薬物療法への薬剤師の参画 18:10~18:55
第2部 災害時の薬物療法 18:55~19:45
・・・・ 休憩(19:45~19:55) 第3部 災害時に困らない「薬とその情報」管理 19:55~20:40
第4部 総合討論 20:40~20:55 災害時の薬物療法、医薬品情報への薬剤師と薬学の関わり |
まとめ | 20:55~21:00 海老塚 豊(NPO法人 医薬品ライフタイムマネジメントセンター・理事長) |